2026年9月29日火曜日

196 社長

二十歳で島を出た時は、着の身着のまま、石垣島、沖縄本島で日雇い労働者として旅費を工面。

少しでも忌まわしい記憶のある島から離れたい、と大阪まで辿り着いたのである。

大阪でペンキ屋、左官屋、土木作業員などを転々とし、溶接工になった。

暇になると、どうしても島での出来事を思い出す。

忘れるように、人の二倍三倍働きに働き続けた。

溶接工から身を起こし、今では立派な鉄骨屋の社長となったのだ。

社員へ訓示することは「借金経営はしない。夜駆け、不意打ちはだめだ。物事は正面からとらえ、筋を通し、正々堂々と行うべし、

迷った時、辛い時は、お互い知恵を出し合い助け合っていこう」という経営理念を貫いているのだ。

社内外からも太っ腹な立派なリーダーとして、社長として尊敬されているのであった。

自分は今、何の不足もなく幸せだ。お金はその気になって働けばいくらでも手に入る。

明子を見た時、自分が起こした事件、その影響は明子の人生に少なからず災いとなったことは間違いないだろう。

できるだけのことをやり、詫びようと思ったのである。

詫びて済むようなことではない。明子が幸せになることを願い、手を合わせる日々である。

今日の金曜日も無言電話があり、明子は華やかな気持ちで踊り狂っていた。

明子の踊りは、願いが込められた念仏踊りである。

確かに、昭二のことは、大好きであった。

恋しい昭二、いとしい昭二は、いつの間にか徐々に遠いものとなりつつある。

昭二を思い浮かべると、孫をお風呂に入れる姿、乳母車で散歩、木陰でくつろぐ昭二の姿。

もう今となっては、思いを寄せたところで、叶わぬ夢となってしまった。

世の中を這いずり、惨めな生活を救ってくれた昭二、今では大事な大事な恩人である。

遠のく恋心、不安でもある。

しかし親にはぐれた子供が、親を恨み、親を恋しがる。

生きているなら、もう一度会いたい気持ち同様、昭二には、今の姿をもう一度見てほしい。

今更交わる心は微塵もない。

たった一度、もう一度、自分の姿を見てほしい。

この極楽とんぼで、一晩で良いから泊まって欲しいのである。

蘇った明子は、とても六十に手の届く女性とは思えない。

若々しく、遥か彼方を見つめ、遠ざかる昭二の姿を追い求める踊り。

時にはフラメンコを遙かに凌ぐ激しさ、しなやかな腰の動き、

見る者を怪しい魔の世界へ引きずり込みかねない、艶やかな色気さえ漂う。

お客が明子の踊りを見ると、ジッとしていられない。

一緒になって腰を上げ、激しく踊り狂うのである。

極楽とんぼ、今日も明子は心の中で念仏をあげ踊る。 

「一度でいいから、泊まりに来て下さい、きっと、きっとよ」

195 大金

 夜這いの話が再燃し、これ以上災いが起きては、と明子の縋る気持ちを振り切り、来た道をとぼとぼ帰る昭二の背中は泣いていた。

昭二は、やはり自分の家には寄らず、そのまま港から四十年前と同じく、誰にも気づかれず島を出た。

後日、明子のもとへ小包が届いた。

差出人住所には全く覚えはないが、間違いなく昭二からの郵便物だ。

この郵便物は、明子の度肝を抜くのである。

郵便物の中身は、長靴とカッパ、明子名義の通帳と印鑑、なんと二千万円もの大金が入っていた。

当時のお金としては、腰を抜かすほどの大金である。

間違いなく昭二が送ってきたものだと思われたが、どうしたものか考えあぐねた。

思案に思案を重ねた末、この金を大事に使い、いつの日か昭二に恩返しをしたい、と考えた。

結論を出してからの明子は、まるで人が変わった。

当時、旅人がちらほら島に来たが、聞くところ島の民家にお世話になり、民泊しているとのこと。

そこで明子は、大勢の人と会話ができ、大勢の人のために、民宿を始めようと決断した。

一度決断をすると、その後はもう電光石火。

役場での諸手続き、指摘、アドバイスを受ければ、間違いなく指示通りやる。

生まれて初めての建物、建築関係者との打ち合わせなど。

民宿は素人なので、石垣島の民宿へ正面からお願いした。 

「お金はいりません、是非、手伝わせてください」と朝から晩までお風呂やトイレの掃除。

料理、接客方法などを次から次へとマスターしていったのだ。

島の民家は、台風があるため平屋だが、ものの見事に、コンクリート造りの二階建て民宿が、一年を待たずしてあっという間に完成。

時代も味方したのか、民宿は早々に大繁盛である。

タレントや有名人も宿泊、話題となって大繁盛。

そしてテレビの取材が舞い込んだ。

明子は、飛び上がらんばかりに喜んだ。

もしかして、昭二が見てくれるのではないだろうか、と考えたのである。

放送後、明子は昭二からの電話を待つが、やはり一度もかかってこなかった。

しかしよく考えると無言電話がかかってくるようになった。

明子はそこで、はっと気が付いた。

電話は毎週金曜日の夜8時頃、決まった時間にかかってくる。

その電話は昭二が名乗れずに明子の声を聞くため、かけているのだと思った。

それからの明子は、金曜日になるとそわそわ、丹念に化粧をし、電話の前で正座するのであった。

そして客は、何故か理解出来ないがこの民宿、金曜日8時以降は、酒の無料飲み放題。

明子が、さも楽しそうに踊りまくるのであった。

ちなみに民宿の名前は、極楽とんぼをイメージし、「とんぼ」と名付けた。

毎週金曜日は、お客も入り交じって踊りまくる、極楽とんぼの民宿となった。

昭二は、誰にも身分を明かしていないが、実は大阪で押しも押されぬ、中堅企業の鉄骨屋の社長となっていた。

194 土下座

夜這いがあったあの日、昭二を受け入れ、ささやかな世帯を持ちたいと思っていた。

昭二が後手に、柱に縛られ泣いている時、なんで父親に自分の気持ちを打ち明けられなかったのだろうか。

何度も、何度も後悔をしてきた。

昨夜もトタンに囲まれた風呂場、ドラム缶の風呂に夜空を眺め、昭二に思いを馳せていたのである。

そんな昭二が、突然目の前に現れ、動揺するのは当然だ。

昭二はまた、あばら屋を見た時、もう両親はなく一人身だろうと思った。

先ほど来、自分を毛嫌いすることなく受け入れてくれている。

もしかして独身で、ずっと自分を待ち続け今日まで来たのではないか。

そう思うと、土下座をし地べたへガツンガツンガツンと頭が割れるほど叩きつけ、謝りたい気持ちで明子以上に動転していた。

沈黙が続いた後、無意識のうちに初めての言葉が出た。

「結婚はしなかったのか?」

明子は、もう開き直っている。

今までの身の上話をポツリポツリ、とかいつまんで話した。

昭二は聞き終わると、大きなため息を漏らした。

明子もまた、昭二にだけは一度話したかった、聞いて欲しい事をしゃべったので肩の荷が下り、ため息をついた。

明らかに朽ち果てたボロボロのトタン屋根、風呂やトイレは青天井、冬場は寒いだろうに。

電気や水道はあるのだろうか。

着ているものはボロボロ。食べ物は。

自分のしでかしたことが、明子の体や人生全てボロボロに破滅させてしまった。

謝って済むようなことではない。

明子の顔を見ていられなくなり視線を外すとハッと我に返った。

もし昭二が明子に会っている姿を見られると村中、島中の人が出ていけ、二度と島に来るな、と罵られるだろう。

後ろ手に再度縛り上げられ、さらし者扱い。

更に明子の身の上に災いがくる。

急ぎでなければならない。

幸いにも明子の家は村の東はずれにあり、誰にも気付かれなかった。

周りを気にする様子で気付いた明子は、何気なく「ご結婚は?」と聞いた。

「初めての孫が生まれたばかりだ」と。

明子は動揺もせず、もちろんそれは当然の姿である。

昭二は自分の来島を実家などにきつく口止めし、背を向けた。

行かないで、と縋る明子の眼に涙。

193 他所者

そんなある時、島に一人の男が立ち寄った。 

手ぶらながら、ネクタイに背広姿。島の人々の姿とは違うので、明らかによそ者、旅人である。

他の客が船から降り終わった後、一人降りて来たが、人が群がっている所は避け、懐かしそうに探索している。

帽子をかぶりサングラスをかけ、口ひげを生やしているが、そうだ、その男こそが四十年前、夜這い事件を起こした、昭二なのだ。

普通の人は、集落を結ぶ大きな通りを歩くのだが、昭二は防風林沿いの小さな獣道を、懐かしそうに周りを見ながら歩いていった。

自分の生まれ育った集落にさしかかったが、集落へ入ろうとはせず、そのまま通り過ぎた。

五百メートルくらい行くと、そこは明子と出会った小さな森だ。

昔とほとんど変わっていない、自分が草刈りをしていた場所と、明子が薪拾いをしていた所は、三十メートルくらいしか離れていなかったのだ。

ふくよかな明子の姿が脳裏をよぎる。

なぜあの時、明子に声をかけられなかったのだろうか。今更ながら情けない。

しばらくして、昭二は更に先へと進んだ。

そこには、明子の家がある。

明子はいつものように庭で野菜作り。 

トマトの新芽の間引き後、菜っ葉を植えようと耕していると、人の気配がしたので何気なく振り返ると、そこには石垣から首だけをチョコンと出したサングラスの男。

石垣越しに視線が合った。

明子は見た瞬間、それが昭二だと分かった。

まさかと一瞬目を疑ったが、まぎれもない。

長い間、待ち続けた昭二。

まさか まさか、と胸は張り裂けんばかりに取り乱し、逃げたくなった。

昭二は門口まで来ると、明子を見据えたまま「入ってもよろしいでしょうか」という合図の会釈をした。

あまりの突然の出来事に、明子は混乱していたが、大人がやっと二人腰掛けられる、小さな縁台へ促した。

明子はどう対応していいのか、もじもじ戸惑っている。

女として、こんなみすぼらしい姿だけは見せたくなかった。

化粧っ気一つなし、ボロボロの落ちぶれた姿だ

恥ずかしい。恥ずかしい。 

今すぐにでも逃げ出したい。

しかし、逢いたい、嬉しい、恥ずかしい、諸々が脳裏でチャンプルーしている。

その内、かすかに笑みが漏れたところは、やはり逢いたかった。

嬉しい気持ちの方が恥ずかしい気持ちを、寄り切ったようだ。


2026年9月28日月曜日

192 瓶拾い

 

結婚をさせ、子供でもできれば、元の明るい子に戻るだろうと、石垣島の知人に相手を紹介して欲しいと依頼した。

五歳年上の健一という男とお見合いをしたが、抜け殻のようになった明子は、親の言うまま結婚。

健一の仕事は、船の荷役という日雇い労働者だ。

当時は重機がなく、男どもが蟻の如く沖縄本島行きの船へ荷物を乗せ降ろししていたのである。

明子との間には、子供ができなかった。

それもあったのか、荷役の仕事は、船の出港が午前中のため、朝早く仕事に出かけ正午頃には自宅へ帰るが、酒浸りとなった。

この島にはパチンコなどなく、暇を持て余してどうしても酒に手が出るのである。

酒に酔うと言葉の暴力、物を投げ、手まで出す始末。

健一の妹がやはり子供もできず、出戻ってきて姑にいびられる。

挙げ句の果ては、健一が外の女、良枝に子供まで生ませてしまった。

良枝は石垣島生まれで、健一の家族も顔見知り、臆面もなく、しゃーしゃーと子供連れで出入りするようになった。

明子は女中以下の扱いだ。

健一は、酒を飲み過ぎたのか、肝臓を患い、五十七歳で他界してしまった。

健一の両親は、他所の女に産ませた孫を可愛がり、その女は堂々と出入りする。姑にはいびられる。

収入がないので、近所の空き瓶を拾い、それで生活するような、困窮を極めた生活となった。

リヤカーも買えない、天秤棒の前と後ろに、カシガー袋(大型土嚢袋)で空き瓶を拾い回り、天秤棒担ぎをしている姿を島の人に見られてしまった。

親父は、強引に乗り込み島へ連れ戻した。

明子五十二歳の時である。

不幸はどこまで追いすがるのか、母は病に倒れ、一年後に他界、父もまた後を追うように翌年他界した。

不幸は更に追いすがる、古い家もまた台風で吹き飛んでしまったのである。

本当の家無し、施しを受ける身となってしまったのである。

建て直す金などあるはずがない。

近所の人が廃材となったトタンを集め、やっと一人が生活出来る、掘っ立て小屋を建ててくれた。

電気代を払う金もなく、ランプ生活。

プロパンガスとて無理、土間で薪を拾い煮炊きする生活だ。

あまりにも惨めな物乞い生活であった。

191 真っ赤っか

 

明子は中学生の頃、テニスに打ち込み地区代表として県大会まで出る程の腕前。

それがまた親父の誇りで、みんなの人気者だった。

明るくて元気な明子、昭二もほのかに思いを寄せていた。

誰にも触れさせたくない存在、とうとう夜這いに及んでいたのである。

先輩が伝授した通り、身をかがめ、こっそり家の裏へまわる。

そして物音一つしないよう、明子の寝ている裏座の戸を、やっと入れるくらいの隙間を開ける。

島の家の造りは、一番座、二番座があり、必ずと言っていいほどその裏に裏座がある。

そしてその裏座はまた、必ずと言っていいくらい外へ出入り出来る構造になっている。

初めての夜這いで、昭二の胸は高鳴り、破裂しそうである。

しばらく目を暗闇に慣らすため、じっとうずくまっていると、なんと明子は大胆なポーズで寝ている。

その姿を見た瞬間、昭二の頭は真っ赤っか。全ての思考力はすっ飛んでいた。

昭二は夕方森で出会い、今夜自分が夜這いに来ることを予測し、待っていてくれたのではないか、昭二にはそう思えるポーズ。

ぶるぶる身震いしながら少しずつ近づいていった。

その時、襖が五センチほどそっと開いたのであるが、人生最高潮、絶好調に興奮しまくっている昭二は、まったく気がつくはずがない。

ふっくらと盛り上がった明子の乳房へ手がかかる瞬間。

予告なし、稲妻なしの突然の落雷!

「こらあー!」と親父の怒鳴り声、天井がスピーカーのコーンとなり爆音が部屋中に響き渡ったのだ。

昭二はそれこそ、失神しかねない驚きだが、抜けた腰でも、とにかく逃げた。

隙間にしこたまぶつけたが、抜け出し、東から回って逃げようとすると、親父が先回りし、泥棒、泥棒と言って通せんぼ。

身を翻し西側から逃げようとすると、今度は母親が、棒を振りかざし、泥棒、泥棒と叫び、挟み撃ちになってしまった。

しからば、石垣をよじ登って逃げようと飛びついたが、酔いがまわっていたのか、すんでのところ石垣の上で親父にズボンの裾を捕まえられてしまった。

ヤモリなら尻尾を切って逃げるが、へばりついたまま、母親は棍棒振りかざし、恐ろしい形相で、ことあらばと一撃態勢、身動き出来ない状態。

後手にねじ上げられ、家の中に引きずり込まれた。

そして両手を後手に、柱に縛りつけられてしまったのだ。

普通なら説教をし、謝れば解き放つのだが、かわいい一人娘を狙ったにっくき男、親父は気がすまない。

夜が明けると、村中の人に「大泥棒を捕まえたから、顔を見てやってくれ」と振れ回ったのだ。

隣村からも見物に来、秀雄や久雄などまでがドジしやがったなとニタニタ見物、これ程の屈辱は無い、という晒し者。

親が謝り解き放たれたが、昭二は外にも出ずこもりきりだ。

自殺しかねない、見るに見かねて、次男の昭二は島からこっそり逃げるように出た。

着の身着のまま、見送る人もない。

以後の行方は親兄弟、誰一人として知る者はいない。

以後、あれ程明るかった明子は、ふさぎ込んでしまった。

190 作法

 日本の南端、この黒島ではその昔、夜這いは日常の出来事で、公然と行われていた。

もちろん夜這いが成立するには、お互いがある程度、好意を持ち、受け入れられていたのである。

昭二は二十歳。隣村に住む十八歳の明子に、ほのかな想いを寄せていた。

夕陽が真っ赤に沈みかけた頃、隣村との間にある森へ、牛の草刈りに出かけた。

その森へ明子もまた、薪拾いにきていた。

二人は森の中で、出くわしたのである。

明子の素振りも決して昭二が嫌いと言う訳ではなく、好意を持っているかに見えた。

明子は流行歌を口ずさみ、さも楽しそうに嬉しそうに薪拾いをしていた。

声をかければよかったのだが、昭二は寡黙で気が小さく、そのまま別れてしまったのである。

夜は村の中心にある大きなガジュマルの下で先輩たちは、三々五々、集まって酒を酌み交わす。

昭二は先輩たちと一緒に飲んでいたが、話題が夜這いの話で盛り上がっていた。

「おい、中里村の明子はよ、今一番いい。熟しているぞ、誰が夜這いをかけるんだ」

他の先輩が「中里村の秀雄がよ、あの子に気がある。近々間違いなく夜這いをかけるはずだぞ」

「お前ら甲斐性なしだな、この村から先に夜這いかける奴いないのか。久雄、お前度胸ないのか」

久雄は「やってもいいかな」と打診をし、乗り気になっている。

「親父の行動を注意しろ、力仕事で疲れ果てぐっすり寝込んだ夜をねらえ」

この空になった二合瓶に水を入れ、戸走り(とばしり)をたっぷり濡らし音が出ないようにする。 

など、久雄に夜這いの注意点をこと細かに伝授しているのである。

昭二は、決して明子はこいつらの夜這いを受け入れないだろう、と期待しながらも、もしかして夜這いに耐えられない明子の姿。

不安と動悸が膨らんでいった。

ある先輩が自慢げに語り出した。

俺が夜這いをかけた時、布団からそっと足元に忍び寄ったが、相手は男だった。

その娘は弟と一緒に寝ていたのだ、その日は失敗に終わった。

そこで運動会の夜、弟がぐっすり寝ている時に夜這いをかけたら、大成功。

あの娘はよかった、おいしかったぞ、と色々と自慢話をし煽り立てている。

夜這いの話、明子の話題で、その晩は持ちっ切りだった。

昭二は、寝ようとしたが、夜這いの話が頭にこびりつき、久雄の夜這いに屈する明子の顔で、悶々と寝られなかった。

夜中の三時、特に意識した訳ではないが、いつの間にか明子の家の近くをうろついていた。

周りはどの家も真っ暗闇で寝静まっている。

先輩の、早くしないと他の奴らに夜這いをされるぞ。

その言葉が頭の中で、エコーとなって止まらない。

196 社長

二十歳で島を出た時は、着の身着のまま、石垣島、沖縄本島で日雇い労働者として旅費を工面。 少しでも忌まわしい記憶のある島から離れたい、と大阪まで辿り着いたのである。 大阪でペンキ屋、左官屋、土木作業員などを転々とし、溶接工になった。 暇になると、どうしても島での出来事を思い出す。 ...