2026年3月23日月曜日

1198 女の夜這い

 

ちなみに、この地区の島に、夜這いは、女がする事になっている島があるそうだ。

そんな島で生まれ育っていればよかった、と誰も思うだろう。

しかし、待てよ・・

もしかして夜這いを待ち続け、何時の間にか立つべきものも立たなくなる。

そしてご臨終、俺は何のために生まれたのか・・

考えないようにしよう・・・・・

女の夜這い。夜這いの作法は、ノーパンが原則だとの事。

ノーパンを方言ではマルバイと言う。

女の夜這いはマルバイだー!

あるボス的存在の女で、顔やプロポーションも十人並み。

その女は、島一番の人気者の男を自分が夜這をかける、と周りに案に振れ回っていたそうだ。

番長的存在だから、当然と考えていたのだろう。

ところが、ある女が、その番長には負けじとこっそり夜這いをかけてしまったのだ。

童貞、略奪だ!

さあ、その事がばれて大変だ。

番長は、手下も動員し、事あるごとにその女をいびり、虐めぬいたのである。

とうとうその女は、島にいられなく、こっそり出ていったそうだ。

以後、親兄弟にも連絡が取れず、生涯行方不明だったという。

しかし、その番長は、いじめの代名詞として、島中知れ渡り、最後まで、結婚出来なかったそうだ。

虐めをすると、結婚出来ない、と言う教訓として、今でも語り継がれ、虐めの事をその女の名前で呼んでいるとの事。

おい! スケバンごっこで、番町やってる女いないか。

あなたの噂は男達に知れ渡り、一生結婚なぞ出来なくなるぞ。

虐めは、よせよ。

虐めは結婚の敵!

それにしてもノーパン女の夜這い、来て欲しい・・

特に村はずれの一軒家で、チョンガー生活男がコチョコチョ台所に立ち、洗濯にトイレや風呂掃除、膝を抱いて寝ていると、つくずく思うもの。

しからば、念じに念じ、念じ続ければ、お夜這いさんが来てくれるのでは、と・・・

戸の隙間をつくり、真っ暗闇にし、待ち続けると気配がしたので、うす目で見ると、野良猫のお夜這いさん。

翌日枕元に小石を用意し、思い切り命中、以後ピタリと来なくなった。

諦める訳にはいかない、お夜這いさんを待ち続けて、一ヶ月半。

待望の、本物のお夜這いさんが来たのだ!

来た・来た・来たぞー!

台風通過後、どんよりと曇った闇夜の三時、うす目で見ると、昼間すれ違い時、笑顔で話しかけて来た、歳は三十前後で二年前より島に住み着いている、艶やかな一人身の女である。

逃げられるとまずいので、いびきをかく。

部屋の隅で闇に目を慣らせた後、いよいよ動き出した。

夏掛けの裾から潜り込み、しなやかなる指先の動き、当然パンツいっちょうはなんなく剥ぎ取られ、息子は直立不動の万全なる体勢。

なま暖かい風は下半身から全身を覆う。

大波、小波、漕ぐ舟は極楽の境地、奥歯が小きざみに舞い上がる。

あまりの腰の激しい使いに、全身の筋肉が収縮し炸裂、思いっきり突き上げた。

夏掛けがポロリ、と落ちた瞬間。

ギャー 

ギ、ギャーーー

歯っ欠け婆バーだ!!!

閃光が全身を走り、生まれて初めて、夢で失神してしもーた。

南無・ 南無・・南無・・・・


1197 図

 


夜這い女


2026年3月22日日曜日

1196 社長

  

二十歳で島を出た時は、着の身着のまま、石垣島、沖縄本島で、日雇い労働者として旅費を工面、少しでもいまわしい記憶のある島から離れたい、と大阪まで辿り着いたのである。

大阪でペンキ屋、左官や土木作業員等転々し、溶接工になった。

暇になると、どうしても島での出来事を思い出す。

忘れるように、人の二倍三倍働きに働き続けた。

溶接工から身を起こし、今では立派な鉄骨屋の社長となったのだ。

社員へ訓示する事は「借金経営はしない、夜駆け、不意打ちはだめだ、

物事は正面からとらへ、筋を通し、正々堂々と行うべし、

迷った時、辛い時は、お互い知恵を出し合い助け合っていこう」

という経営理念を貫いているのだ。

社内外からも太っ腹な立派なリーダーとして、社長として尊敬されているのであった。

自分は今、何の不足もなく幸せ、お金はその気になって働けばいくらでも手に入る。

明子を見た時、自分が起こした事件、その影響は明子の人生に少なからず災となった事は間違いないだろう。

出来るだけの事をやり、詫びようと思ったのである。

詫びて済むような事ではない、明子が幸せになることを願い、手を合わせる日々である。

今日の金曜日も無言電話があり、明子は華やかな気持ちで踊り狂っていた。

明子の踊りには、願いが込められた念仏踊である。

確かに、昭二の事は、大好きであった。

恋しい昭二、いとしい昭二は、何時の間にか徐々に遠いものとなりつつある。

昭二を思い浮かべると、孫をお風呂に入れる姿、乳母車で散歩、木陰でくつろぐ昭二の姿。

もう今となっては、思いを寄せたとて、叶わぬ夢となってしまった。

世の中を這いずり、惨めな生活を救ってくれた昭二、今では大事な大事な恩人である。

遠のく恋心、不安でもある。

しかし親にはぐれた子供が、親を恨み、親を恋しがる、生きているなら、もう一度会いたい気持ち同様、昭二には、今の姿をもう一度見て欲しい。

今更交わる心は微塵もない。

たった一度、もう一度、自分の姿を見て欲しい。

この極楽とんぼで、一晩で良いから泊まって欲しいのである。

蘇えった明子は、とても六十に手の届く女性とは思えない。

若々しく、遥か彼方を見つめ、遠ざかる昭二の姿を追い求める踊り、時にはフラメンコを遙かに凌ぐ激しさ、しなやかな腰の動き、

見る者を怪しい魔の世界へ引きずり込みかねない、艶やかな色気さえ漂う。

お客が明子の踊りを見ると、ジッとしていられない。

一緒になって腰を上げ、激しく踊り狂うのである。

今日も明子は、心の中で念仏をあげ踊る。

民宿とんぼ 極楽とんぼ。

一度でいいから、泊まりに来て下さい。

きっと、きっとよ!

民宿とんぼ 極楽とんぼ。是非、泊まりに来て下さい。

きっと、きっとよ・・・・・完


1195 大金

   

昭二は、夜這いの話が再燃し、明子の身にこれ以上災が起きては、とそそくさと帰り支度をした。

明子の縋る気持を振り切り、来た道をとぼとぼ帰る昭二の背中は泣いていた。

昭二は、やはり自分の家には寄らず、そのまま港から四十年前と同じ、誰にも気づかれず島を出た。

後日、明子のもとへ小包が届いた。

差出人住所には全く覚えはなく、昭二からの郵便物には間違いなし。

この郵便物は、明子の度肝を抜くのである。

郵便物の中味は、長靴とカッパ、明子名義の通帳と印鑑、なんと二千万円ものカネが入っていた。

当時のお金では、腰を抜かす程の大金である。

間違いなく、昭二が送ってきたものだと考えられるが、どうしたものか考えあぐねた。

思案に思案をした末、この金を大事に使い、何時の日か昭二に恩返しをしたい、と考えた。

結論を出してからの明子は、まるで人が変わった。

当時、旅人がちらほら島に来たが、聞くところ島の民家にお世話になり、民泊しているとの事。

そこで明子は、大勢の人と会話が出来、大勢の人の為に、民宿をはじめようと決断した。

一度決断をすると、その後はもう電光石火。

役場での諸手続き、指摘、アドバイスを受ければ、間違いなく指示通りやる。

生まれて初めての建物、建築関係者との打ち合わせあり。

民宿は素人なので、石垣島の民宿へ正面からお願い。

お金はいりません、是非、手伝わせて下さいと、朝から晩までお風呂やトイレの掃除。料理、接客方法などを次から次とマスターしていったのだ。

島の民家は、台風があるため平家だが、ものの見事、コンクリート建ての二階家の民宿が一年を待たずに、あっと言う間に完成。

時代も味方したのか、民宿は早々に大繁盛である。

タレントや有名人も宿泊、話題となって大繁盛。

そしてテレビの取材が舞い込んだ。

明子は、飛び上がらんばかりに喜んだ。

もしかして、昭二が見てくれるのではないだろうかと考えたのである。

放送後、明子は昭二からの電話を待つが、やはり一度もかかってこなかった。

しかしよく考えると無言電話がかかってくるようになった。

明子はそこで、はっと気がついた。

電話は毎週金曜日夜の8時頃、決まった時間にかかってくる。

その電話は昭二が名乗れずに明子の声を聞くため、かけているのだと思った。

それからの明子は、金曜日になるとそわそわ、丹念に化粧をし、電話の前で正座するのであった。

そして客は、何故か理解出来ないがこの民宿、金曜日8時以降は、酒の無料飲み放題。

明子が、さも楽しそうに踊りまくるのであった。

ちなみに民宿の名前は、極楽とんぼをイメージし、「とんぼ」と名付けた。

毎週金曜日は、お客も入り交じって踊りまくる、極楽とんぼの民宿となった。

昭二は、誰にも身分を明かしていないが、実は大阪で押しも押されぬ、中堅企業の鉄骨屋の社長となっていた。


1194 土下座

  

夜這いがあったあの日、昭二を受け入れ、ささやかな世帯を持ちたいと思っていた。

昭二が後手に、柱に縛られ泣いている時、なんで父親に自分の気持ちを打ち明けられなかったのだろうか。

何度も、何度も後悔をしてきた。

昨夜もトタンに囲まれた風呂場、ドラム缶の風呂に夜空を眺め、昭二に思いを廻らしていたのである。

そんな昭二が、突然目の前に現れ、動揺するのは当然だ。

昭二はまた、アバラ屋を見た時、もう両親はなく一人身だろう。

先ほど来、自分を毛嫌いする事なく受け入れてくれている。

もしかして独身で、ずっと自分を待ち続け今日まできたのではないか。

そう思うと、土下座をし、地べたへガツンガツンガツンと頭がわれる程叩きつけ、謝りたい気持ちで明子以上に動顛していた。

沈黙が続いた後、無意識のうちに初めての言葉が出た。

「結婚はしなかったのか?」

明子は、もう開き直っている。

今までの身の上話をポツリポツリ、とかいつまんで話した。

昭二は聞き終わると、大きなため息をもらした。

明子もまた、昭二にだけは一度話したかった、聞いて欲しい事をしゃべったので肩の荷が下り、ため息をついた。

そして何気なく「ご結婚は?」とオーム返しに聞いた。

「初めての孫が生まれたばかりだ」

明子は動揺もせず、勿論、それは当然の姿である。

明子の家は村の東はずれにあり、この家に用事のある人以外は通らない。

誰にも気付かれなかった。


1193 他所者

  

そんなある時、島に一人の男が立ち寄った。

手ぶらながら、ネクタイに背広姿、島人の姿とは違うので、明らかに他所者、旅人である。

他の客が船から降り終わった後、一人降りて来たが、人が群がっている所は避け、懐かしそうに探索している。

帽子をかぶり、サングラス、口ひげをはやしているが、そうだ、その男こそが四十年前、夜這い事件を起こした、昭二なのだ。

普通の人は、集落を結ぶ大きな通りを歩くのだが、昭二は防風林ぞいの小さな獣道を、なつかしそうに回りを見ながら歩いていった。

自分の生まれ育った集落にさしかかったが、集落へ入ろうとはせず、そのまま通り過ごした。

四、五百メートルくらい行くと、そこは明子と出会った小さな森だ。

昔と殆んど変わっていない、自分が草刈をしていた場所と、明子が薪拾いをしていた所は、三十メートルくらいしか離れていなかったのだ。

ふくよかな明子の姿が脳裏をよぎる・・

なぜあの時、明子に声をかけられなかったのだろうか。今更ながら情けない。

しばらくして、昭二は、更に先へと進んだ。

そこには、明子の家があるのだ。

明子は何時ものように庭での野菜作り。

トマトの新芽の間引きの後、菜っ葉を植えようと耕していると、人の気配がしたので何気なく振り返ると、そこには石垣から首だけをチョコンと出したサングラスの男が覗いていた。

明子は見た瞬間、それが昭二だと判った。

まさか・・一瞬目を疑ったが、まぎれもない。

長い間、待ち続けた昭二。

まさか まさか・・と胸は張り裂けんばかりに取り乱し、逃げたくなった。

昭二は門口まで来ると、明子を見据えたまま「入ってもよろしいでしょうか」という合図の会釈をした。

あまりの突然の出来事に、明子は混乱していたが、大人がやっと二人腰かけられる、小さな縁台へ促した。

明子はどう対応していいのか、もじもじ戸惑っている。

さすが女人で、こんなみすぼらしい姿だけは見せたくなかった。

化粧っけ一つなし、ボロボロの落魄れた姿だ。

恥ずかしい・・ 恥ずかしい・・ 今すぐにでも逃げ出したい・・

しかし、逢いたい、嬉しい、恥ずかしい、諸々が脳裏でチャンプル、チャンプル。

その内、かすかに笑みが漏れたところは、やはり逢いたかった、嬉しい気持ちの方が恥ずかしい気持ちを、寄り切ったようだ。

実は、明子は昭二のことが好きだった。


1192 瓶拾い

  

結婚をさせ、子供でも出来れば、元の明るい子に戻るだろうと、石垣島の知人に、相手を紹介して欲しいと依頼した。

十歳も年上の健一という男と見合いをしたが、抜け殻のようになった明子は、親の言うまま結婚。

健一の仕事は、船の荷役という日雇い労働者だ。

当時は重機がなく、男どもが、蟻の如く沖縄本島行きの船へ荷物を乗せ降ろしをしていたのである。

明子との間には、子供が出来なかった。

それもあったのか、荷役の仕事は、船の出港が午前中の為、朝早く仕事に出かけ正午頃には自宅へ帰るが、酒びたりとなった。

この島にはパチンコなどなく、暇を持て余してどうしても酒に手が出るのである。

酒に酔うと口の暴力、物を投げ、手まで出す始末。

健一の妹がやはり子供も出来ず、出戻って来、姑のいびり。

挙げ句の果ては、健一が外に良枝という女に、子供まで生ませてしまった。

良枝は石垣島生まれで、健一の家族も顔見知り、何のおく面も無く、しゃーしゃーと子供連れで出入りするようになってきた。

明子は、女中以下の扱いだ。

健一は、酒を飲み過ぎたのか、肝臓を患い、六十歳で他界してしまった。

健一の両親は、他所の女に生ませた孫を可愛がり、その女は堂々と出入りする。

姑にはいびられる。

収入がないので、近所の空き瓶を拾い、それで生活するような、乞食同然の生活となった。

リアカーも買えない、天秤棒の前と後ろに、カシガー袋(土嚢袋)で空き瓶を拾い回り、天秤棒担ぎをしている姿を島の人に見られてしまった。

島の親父は、強引に乗り込み島へ連れ戻した。明子五十五歳の時である。

不幸はどこまで追いすがるのか、母は病に倒れ、一年目で他界、父は後を追うようにまた一年後に、他界してしまった。

古い家もまた、台風で吹き飛んでしまったのである。本当の家なし乞食となってしまったのである。

建て直す金などあるはずがない。近所の人が、廃材となったトタンを集め、やっと一人が生活出来る、掘っ立て小屋を建ててくれた。

電気代を払う金もなく、ランプ生活。プロパンガスとて無理、土間で薪拾いをし、煮炊きする生活だ。

あまりにも惨めな乞食同然の身となってしまった。


1198 女の夜這い

  ちなみに、この地区の島に、夜這いは、女がする事になっている島があるそうだ。 そんな島で生まれ育っていればよかった、と誰も思うだろう。 しかし、待てよ・・ もしかして夜這いを待ち続け、何時の間にか立つべきものも立たなくなる。 そしてご臨終、俺は何のために生まれたのか・・ 考えな...