筋肉が付き、ピコタンも徐々に目立たなくなり、勉強で他のいじめっ子を負かす事ができる、と悟った光男は、必ず一番になると猛勉強をするようになった。
周りの家では、石油を一升瓶で買うが、貧しく二合瓶でしか買えない。
小さなランプだが、父は光男に明け渡し、細かい仕事を明るい内に済ませ、暗闇でせっせと内職をする。
子供の時の境遇は大人になってから、大きな財産となる。
小中学を通し、どしゃ降りの雨に打たれたことは、いつの間にか苦痛ではなく、光男の中で修行僧が滝に打たれる如く、快感になって行ったのである。
ある日、営業で大きなイベント収録を受注、最終打ち合わせ確認時、途中よりどしゃ降りの雨となったが、例によって快感を感じ客先へ行った。
軒先で滴る雨を切り、客の前へ立つと相手がびっくり。
タクシーも有るだろうに、傘も買えるだろうに、と
ソファーに座ると濡れるので、立ったまま最終確認をし、またどしゃ降りの雨の中を平然と帰る。
イベントは晴天に恵まれ大成功。
その会社の社長が「光男と言う男、雨が降ろうが槍が降ろうが、しっかり仕事をやり遂げる、一番信用出来る」と尾ひれを付けて回ったのである。
もっと大きな財産は、周りが全員風邪を引いていても、部屋中菌が充満していても、
絶対と言っていいくらい、この男の体はまともじゃないのではと疑うほど、風邪を引かない丈夫な体になったのだ。
そして言う「地上にいる動物の中で、雨が降ったからとて傘をさすのは人間だけだ、雨なんぞ負けるな」と。
母との約束で学校へ行きはしたが、やはり借りてきた猫の如く、もの言わぬ人、方言でムヌザとあだ名され卒業。
高校へ進むにもまた、島からは同学年で光男一人。
地元の石垣中学から、なだれ込んだ連中が、徒党を組んでいるように見え、ここでもまたもの言わぬ人とあだ名され卒業。
上京後就職するにも、今度は異境のパスポート沖縄人として見られ、そのことが自分自身にも大きくのしかかり、言葉のなまりが気にかかり多くをしゃべらなかった。
同期の人は30歳前に管理職として登用されていきますが、やはり置いてけぼり。
やっと30歳で管理職の末席につくようになった頃、先輩管理職がごっそり飛び出していったのです。
その後、社の状況は日に日に悪化、ほとんど泥沼に片足を突っ込んだ状態となりました。
取り巻く状況が悪い時、ほとんどの人は身を守る方へと向かいますが、光男の場合、全く逆で一気に攻める事を考えたのです。
長い間もの言わぬ環境で育ち、何かに挑戦してみたい、他人に負けるはずがない、という情熱のエネルギーが、爆発寸前まで蓄えられていたのです。
貧乏のどん底を這いずり嘗め回す、しこたま言葉を無くす程いじめ抜かれる、人生の一番大事な結婚では、生い立ちを罵られ塩を撒かれる。
人間、生まれた所で価値が決まるわけではない!! と怒鳴りたいが耐え抜いてエネルギーを貯めるしかなかった。
そのエネルギーは、人間が豹変したのではないかと思われる勢いで、トップを説得しまくり承諾を得ると即行動。
まず100人を動かすには、行動を共にするブレーンが10人いれば、流れは変えられるだろうとブレーン作りを開始しました。
守りに回った人を攻めに転じさせることは容易ではありませんでしたが、熱意をもって説く姿にブレーンが増え、大きな展開ができるようになったのです。
