2026年1月15日木曜日

1040 ヌンチャク


ひかるは、入社早々ある事件を起こした。

友人、上司と府中駅前の飲み屋へ行った時の事である。

スナック風の飲み屋で、4人で楽しく飲んでいた。

店はママさんと、若い女の子が一人手伝っているだけで、小ぢんまりした店であった。

かなりアルコールも回った頃、米兵のお客が二人入って来た。

近くに調府基地があり、その近辺は結構米兵がいたらしい。

思春期を沖縄で過ごし、敗戦後、米兵はやりたい放題。

勝ち誇った米兵による犯罪、本土では報じられない事が日常茶飯事起きていた。

犯人は沖縄の裁判所で裁く訳にはいかない。勿論、日本の法律も通用しない。

米国へ送還され、どういう処罰が下されたか知る権利もなかったのだ。

当然、この地区で青春時代を過ごした連中は、否応なしに反米感情が叩き込まれていたのである。

米兵が入ってくると、ママさんの態度は一変、目いっぱい色気、愛想を振りまいているのである。

当時は1ドル360円時代。ドル紙幣で払ってくれる米兵は特上のお客なのである。

その内ママさんも女の子も米兵のテーブルへ、ドル紙幣を胸へ入れ、きゃっきゃ、と騒いでいるのである。

はしゃぎぶりを聞いていると、ムラムラと反米感情が湧きあがってきた。

日本の女も女だ、お前ら売春婦か!、とどなりつけたかったが、その怒りは米兵へ向かった。

いきなり米兵の所へ行き、米軍は必要ない! 帰れ!と怒鳴り付けたのである。

上司がいたので、壊した備品代は払ってくれた。

そして翌日から 「この男は、外人の居る所に、決して出入りさせるべからず、外人に近づけるな」という、お振れが社内へ回った。

そういう事があってから、ひかるは自分の感情がコントロール出来なくなる事を恐れ、極力部下はいない方がいい、と一人黙々仕事をしていたのである。

事実、酒の席で喧嘩、空手のヌンチャクを振り回し、相手を怪我させ、即ブタバコ、即会社をクビ、なんていう例を何度も見てきている。


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