2026年1月24日土曜日

 1075 我輩は猫ではない!!

 

当時の沖縄は米国の統治下、東京から遥か二千キロも離れ、生まれ育った島は、日本の地図のどこを探しても載っていなかったのです。

そんな島があるはずがない!

地図にない、一週間以上もかかる、地の果てへ、娘を嫁に出す訳にはいかない!

代々江戸っ子の親には、とても理解してもらえず、あたかも出所不明の住所不定男か、結婚詐欺師の扱い。

訪ねる度に塩を撒かれ、しまいには座布団を投げられる始末。

結婚話は暗礁に乗り上げ、破談になるかと思われましたが、男としてここで引き下がる訳にはいかない。

意地を見せようと、芯から怒ったが、親戚、頼る人とてない二十五歳の若さ。

一人で立ち向かうしかありません。

結婚は当人同士の問題、親や家族が結婚する訳ではない。

文句を言われる筋合いは無いはずだ!

決して、路頭に迷わせるような事はしない。

信じて欲しいと説得。

最後の手段に訴えるしかありませんでした。

これ以上話をしても無理だ!

とにかくこの家を出ろ!

俗に言う駆け落ち・・

彼女が必要な着替えだけはと取りに行き、風呂敷包にし出る直前、

「こちとら江戸っ子だ、犬や猫がくっ付く訳ではあるまい、隣近所の付き合いもある事だし、式くらいは挙げたらどうだ!」

何! よくぞ犬、猫扱いしてくれたな!

我輩は猫ではない!! と怒鳴り返したかったが、ひかるは決断が早い。

何も喧嘩したくて喧嘩している訳ではない。

要は結婚がしたいのである。結婚が出来ればいいのである。

瞬時に頭を切り替え難問解決。

包みを解かせ、「式の日取りは、追って参上つかまつります」と。

彼女は心配顔。

今後この結婚話に反対する様な言動があったら、いつでも私のアパートへ来い、朝でも、夜中でも問題ないよう、管理人には話をつけておく、と・・

目出度く式を挙げ、娘と息子の二人の子供にも恵まれ、あれだけ反対した親も孫達の顔を見、誤解が溶けて行きました。

江戸っ子気質は一度信頼すると、後は何も残しません。

何事もひかるを頼りにし、女房より先に相談してくれるようになりました。

何んで実の娘に、先に話をしてくれないのかと、女房が焼餅を焼く。

平和な、ひかる一家であった。

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