2025年7月23日水曜日

1088 NASA


当時、可搬型VTRとして、あのNASAが軍事偵察機用に開発した、VRー3000なる機種が、国内では4,5台導入されていた。

どういう訳か、その機種が、ひかるの会社にあった。

設立時、TBSとフジテレビが折半出資、別々に確保するよりは、子会社に持たせ、両局で使用出来る、という事で、導入されたらしい。

当時は、カラーテレビが飛ぶように売れ、大企業はフィルムCMから、色再現の良い、VCM作りに軸足を移しており、このVRー3000が威力を発揮していたのである。

オペレーター一人付で、日だて15万円でも、飛ぶように注文があった。

ひかるは売れれば売れる程、早く可搬型国産機開発の必要性、反米感情が日に日に増していった。

当然、ソニーも可搬型、Hー500という機種を開発しておりフィールドテスト中だが、どうにも訳の分からない回転エラーが出る。

チェックをするとOKで、エラーの原因が、全く掴めないのだ。

事故日報をピックアップし、気になる事があったので部下にその日の天候を調べさせた。

やはり雨が降っており、それが原因だが、室内での使用でなぜ?

その事をソニーへ連絡、しばらくして原因解明OKの連絡。

湿気でテープのツルツル裏面の貼り付き現象が出ているとの事。

湿度による微妙な事でエラーが出ていたのだ。

さすがソニーで、世界中の支店へ打電し調べ上げ、湿度の一番高いのはボルネオとの事。

それ以上の湿度でも稼動するよう設計変更。Hー500は全世界へ輸出され制覇していったのである。

VRー3000と並べて使うと、桁違いの性能。これでアメリカ製VTRを抹消出来た、と。

VTRは平坦な所で、そっと置いて使う精密機械、しかしひかるはトラックの荷台に紐で結え付け移動使用、どんな地震でも稼動する事を求めたのである。ひかるが立ち上がり、オメガ方式へ切り替える事が出来た。

出来なかったらと考えると、オートスレーディング、カセット化は難しく、途中から方式変更、と言う事態になれば、莫大な費用が掛り、番組内容にも影響したであろう。

そして、一番大事な事は、日本のVTRが全世界で認められた事だ。

南端の小さな島で、ランプの灯りで育った少年の目、どこかで垣間見たカセット、いずれ放送現場でも使われるだろう、と10年先を夢に描いたのである。


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