2026年7月6日月曜日

119 土左衛門

 光男がパスポート時代、結婚には、女房の親から猛反対を受けた。

その親がある会合で、放送関係者と出会った。

その人の話で、放送業界に沖縄出身の誰もがリスクを恐れ、引き受けない仕事でも平気で引き受け、ものの見事に成し遂げる素晴らしい男がいるという話を聞く。

よくよく聞いてみると、それが自分の娘の婿、光男だということが分かった。

そして今までの考え方を一変させたのだ。

勿論光男側も和解し何事も光男を頼りにするようになった。

そして都心の一等地の不動産を光男夫婦に託し亡くなったのである。

光男は先見性では、ずば抜けた面をもっている。

建築法が緩和され都心回帰、マンションのブームが来る、といち早く高層マンションをぶち立てたのである。

六本木ヒルズには届かなかったが、光男は最上階で、ベランダから東京の夜景を眺め、日々旨い酒を飲む。

また南の島には、父が残した広々とした土地と生まれ育った別荘がある。

暇な時は、ふらりと南の島へ飛ぶ。JAL、ANAはワシの下駄だ、と。

貧乏王国大統領閣下と呼ばれたが、気がついてみると名実共に大富豪になっていた。

島の多良間邸の広い庭には、大きなヤラブの木が5、6本ある。

大き目のハンモックとガーデンテーブルをしつらえ、朝食は自動パン焼き機で出来立てのパンと出来立てのジュースを飲む。

ハンモックで本を読み、うつらうつら。

パソコンをやったり、潮時のいい時は、150メートル先のプライベートビーチと呼ぶ浜へぷらりと行く。

この島のリーフは世界的にも類を見ない、東京ドーム数個分の天然プールがいくつも出来上がる。

潮の流れもなく観光客は浮き輪さえあれば絶対安全。熱帯魚達と戯れる竜宮城だ。

光男の特技は、この巨大プールで浮き輪に入り、立ったまま、麦わら帽子をかぶり、サングラスをしたまま立ち昼寝をすること。

観光客は動かないので、土左衛門だ、と大騒ぎ。

ある時は救難ヘリコプターを呼ばれる寸前までいった。

ワシはまだ死にたくないぞ。 

死なせるな。

夕日が周り一面を真っ赤に染める頃、プライベートビーチで、光男は若かりし頃に思いをはせていた。


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