2025年7月16日水曜日

 1057 男泣き

 

入社5年目、放送局では心臓部門の「テレシネ」職場へ配属されました。

放送開始から終了まで、交代制宿泊勤務がある、映画やアニメ、大量のコマーシャルなどを送出する職場。

数10台もの映写機がずらりと立ち並び、指定された映写機へ素材を装填。

魔法の箱の心臓部は、ミスが即全国へ流れ、緊張感がピリピリ伝わる職場です。

遂に自分自身の手で、フイルムをかけ、全国へ映画を流す時が来たのです。

興奮のあまり胸は高鳴り、震える手。

映写機の爪の噛み具合をニ、三度確認。

3秒前!

2秒前!

1秒前!

スタート、オン!

・・大成功!!

遂に魔法の箱へ辿り着いた。

見果てぬ夢だと思っていたのに・・

熱く込み上げるものがあり、私と同じ映画館に行けない子供達が、テレビで映画を観る事でしょう。

体が不自由な人で、映画館に行かなくても、家で映画が観られる。

病院で療養中の人も・・

お年寄りで映画館に足を運べない人も・・

山間部の人も・・

島の人も・・

この映画を、何百万人もの人が観ているのだろうか。

少しは世の役に立っているのでは・・

夢を追い続けて来た事は、間違いではなかった。

遥か南の島、南十字星を眺め、ランプの灯りで過ごした子供の頃が思い出され、映画が観れなくて悔しかった事。

数々の失敗をし、パスポートを握り締め、親と別れた事。

貧しくて辛かった東京での生活等が、走馬灯の如く通り過ぎ、日本の南端で動き出したこの鼓動、無意味ではなかった。

父よ! 母よ! この世に誕生させてくれて、有難う。

生まれて初めて、芯底湧き出る喜びを体験し、涙が出ました。

男泣きです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

 1175 豊年際

  黒島には、かなり古くから伝わる、豊年際の、ハーリー競争がある。 ハーリー競争は、中国や沖縄本島、石垣島や周りでも行われているが、この黒島の場合、かなり違った行事である。 船を漕ぐ競争だけでなく、ウーニーと呼ばれる、走り手、その競争が、かなりメインの役割をする。 写真は、ウーニ...