2026年7月18日土曜日

149 神様だよ

 

この島に、年は58歳、東京からUターンしてきたY君夫婦がいる。

子供はいないが、島の誰もがうらやむくらい、どこへ行くにも二人、すこぶる仲の良い夫婦だ。

普段は無口で、酒もあまり飲まず、ひたすら仲の良い夫婦をやっている。

先日、家を手直しするので、手伝ってくれと言うと「はいきた兄貴、任せてくれ」と引き受けてくれた。

仕事も無事完了、ビールと泡盛を飲むと、ペラペラ喋りだした。

俺みたいな男の所へ、嫁に来てくれた女房、神様だよ、ありがたいと思っている。

実はそれには訳がある、と喋りだした。

小学校5年生の時、担任は若い女のS先生だった。

この先生には、隣の西表島に、同じ教員で恋人、K先生がいたという。

そのK先生は週末になると、考えられないことだが、西表島で拾った、写真の飛行機の残骸、燃料補助タンク。

それに乗って、一人で櫂をこぎ、8キロ近く、海流もある荒海を渡ってこの島のS先生に会いにくる。

島中の人がK先生の命懸け、と言うか、命懸けの恋には、あきれ果て大きな話題だったという。

島の子は、猫よりも身軽に石垣を乗り越え、猫よりも音をたてずに忍び寄り、S先生の戸の隙間から大人のお付き合いなどを観察したという。

素知らぬ顔で、教壇に立つS先生の顔を見、友達同士でつっつきあって面白がっていたという。

そのうち4月になり、島に新しい男の先生が赴任してきた。

こともあろうに、S先生は新しく赴任してきた若い先生にぞっこん、出来ちゃっていることは島中の人が知っている。

命懸けで通ってきたK先生は、泣く泣くまた命懸けで帰るしかない。

島の人たちはK先生が自殺するのではと同情、あまりにも身勝手なS先生の変わり身は、話題になったという。

そしてS先生は、新しい恋人とさっさと結婚してしまったのである。

「兄貴よ、俺は女が信じられなかった、俺など何の取り柄もない、女房はずーっとついてきてくれている、神様、仏様のように思える」だと。

世の男性共よ、女房を大事にしよう。

逃げられてからでは遅い、神様、仏様だ。

そんなY君の余韻に浸っていると、入れ替わりで島一番の物知り博士だと自認する、島じいが泡盛を片手にニコニコ入ってきた。

「何をしているんだ」と言うので、ブログを書いていると言うと、グローブは知っているが、何だそれは、と言う。

島ではインターネットをやっている人はほとんどいない。

年寄りたちはインターネットと言えば、人を誹謗中傷する道具と解釈しているようだ。

まかり間違ってもそんなもの持ち歩くんじゃないぞ、と注意されるのである。

島じい、インターネットって知ってるか、と聞くと「バッハルン!」(あったりまえ、しっているさー)と方言で自信ありげに答えた。

昔は、女しかしなかったのに、最近は男までがやっとる、と言い出す。

観光客が、ヘッドセットをかけて歩くのを見、それがインターネットと、解釈しているようだ。

昔、女性がヘアネットをしていたのを、最近では、男までがやる。それがインターネットと解釈しているらしい。

ヘアネット、ヘッドセット、インターネット、頭の中で混乱しているようだ。

言われてみれば、インターネットは頭を使う。

頭に関係するヘアネット、ヘッドセット、インターネットのチャンプルーだー

あれれ、この島じいの解釈、間違っているのかな?

おい、おい!こっちまで脳内超伝導現象だ。


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