前にも増して泣き方が、懇願するようなもの悲しさ、悲痛な声で泣いている。
再度育蔵じいさんのところへ行くと、満面の笑顔で泡盛を舌なめずりして飲んでいる。
育蔵じいさんが泡盛を飲むとケツに根が生え、びくとも動かず、鳴き声などまったく耳に入らない。
頼んでも、頭の中は泡盛のことだけでまったく話にならない。
そして言い放った。
再度鳴きだしたらまた指を突っ込め。これを繰り返していると大丈夫だよ。
一晩くらいは、ヤギと添い寝しな。
ヤギの糞の中で寝るのか、バカバカしいと高山夫妻は腹に据えかね帰った。
今度は、光男のところへ相談にきた。
あまりにも島暮らしのルールを知らない。
バカバカしい相談なので、この問題を解決できれば、間違いなくノーベル賞はもらえる、夫婦で本気になって考えな。
ヤギの糞がいやなら、自分のベッドへお招きしろ、と言ってやった。
夫婦は周りに、島人は自分たちの悩みを本気で相談に乗ってくれない。
自分たちは移住者として、よそ者扱いされている、と愚痴をこぼしたそうだ。
あんたら馬鹿か。
そんな下らないことで島の人たちと諍いを起こすようでは、この先が思いやられる。
横浜へ帰って、週刊誌ネタで井戸端会議をしていろ。
帰ったほうがましだぞ、と言ってやりたくなった。
高山夫妻のところの2匹目のヤギがとうとう発情してしまった。
メスヤギの鳴き声は、ますますひどく、1週間おきに2日間、昼夜を問わず鳴きつづけるという。
それに今度は、子ヤギが鳴き始めたのである。
高山夫人は、とうとう完全なるノイローゼ状態だ。
今度こそはと、わらにもすがる思いで、育蔵じいさんのところへ相談に行くと、「水をかければいいさー」という。