この島に、30年前に本土から移住してきた人がいる。 コンクリで立派な家を建て、そのかわり冬場しか島にはいない夏場は本土へ帰るのである。 その家が空き家にならないよう、管理の名目で夏場だけY氏が利用している。 当然30年来、島へ来ているから、年齢的にもも50半ばである。 そのY氏の生き方が変わっている。 冬場はどうするかというと、本土のスキー場でインストラクターをしているという。 冬場にインストラクターで稼いだカネで、夏場は、他人の家を自由に使って気ままに生きているのである。 背丈も高く、顔自体も、結構モテるタイプだ。 そして島の民宿とも顔見知りになり、夏場は水着姿の女の子たちをいろんなポイントへ案内したりして、自由に生活している。 自分の家も持たず、結婚もせず、しかも常に若い女達が回りにはべり、不自由しない、ちゃんと人生が成り立っているのである。 スポーツマンタイプで、女性がかなり群がってくるはずだのに、うまくかわす術もあるようだ。 お金が無くても、自由で気まま、しかも女に不自由しない生活を30年も続けられる、まか不思議である。 団塊世代の人達は、働かざる者、食うべからず、としゃにむに働いて家庭を維持してきたはずだ。 そういう人達から見ると、いかにもこんな人生があるのか、一年だけでも体験したい、と感心させられる珍人生物語である。 M君は、20年前、二十歳の時に、この島に遊びに来た。 ちょうどその頃、島の人が民宿をしていたが、閑古鳥が鳴き、つぶれかかった一軒の民宿を自分が借り切るような形で、経営を引き継いだ。 島の人が民宿をやると、どうしても昔からの島料理であったり、結構虫がいるが、それも全然気にしない。 よってなかなか繁盛しないのである。 M君はかれこれ15年間、コツコツとリピーター客を捕まえ、そして嫁さんも確保、子供もでき、いよいよ自分の民宿を建てる計画を実行した。 土地を確保し、整地していると、どうも古井戸らしいものが出てきた。 誰かが、埋めた跡が残っていた。 村の古老に話を聞くと、確かにここには依然、家があって、間違い無くそれは、古い井戸であるとの事だった。 その古老は、あなたは大変幸運な男だ、島では昔から、井戸を埋めると、子孫末代まで、いいことがないと、言われている。 その井戸を見つけたのだから、ちゃんと生きかえらせれば、君には幸運がもたらされるであろう、と言ったのである。 誰かが埋めた形跡があり、庭も狭くなるので、そのまま埋めてしまおうかと思ったが、古老の話が気にかかり、生きかえらせることにした。 雨水を溜めるための、丸いタンクの使い古しをその井戸にかぶせ、真ん中に穴を開け、鉄パイプで、空気が通るようにし、子供たちにも危険が、及ばないようにしたのである。 コンクリ二階建て、島1番の立派な民宿が出来上がり、営業を開始すると、古老に言われた通り、見事に繁盛したのである。 開業してから2年、今ではお客を断るのが、大変だという。 中には、日程をずらせても宿泊できない、どういうことだと詰め寄るお客もおり、うれしい悲鳴どころか、本当につらいですよと嘆いている。 観光客の中には、その古井戸を見、それは何ですかと尋ねる人もいるという。 これこれしかじか、と話をすると、この古井戸のおかげで、私たちはこんな立派な民宿に宿泊出来たんだと、手を合わせるお客さんもいるという。 M君は、村の古老の話を聞き捨てにせず、おかげで自分は、言われた通り、大変な幸運に恵まれたと、感謝をしているとのことだ。 古井戸や、お客呼び込む、福の神
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