2026年5月4日月曜日

1016 パンの耳

 ひかる19歳。パスポート持参で貧しい中での上京。

頼る人とて無く、バイトに夜学。

バイトの金が入るとラーメンを箱ごと買い込み、コッペパンとの連続。

食べ物さえ確保するのが大変な時期でした。

何時ものパン屋へ行った、ある日の出来事。

顔色は浅黒く頬は痩せこけ、明らかに上京したての田舎顔。

手はズボンのポケットへ入れ、十円玉を数え、買えるかどうか思案中。

目は卑しくも買えるはずのない、美味しそうなケーキの方へ行ってしまいます。

一度でいいから、ケーキなる物を食べてみたい・・

しかし金がない。

空腹、みじめ・・

飢えた目で周りのパンをキョロキョロ見ている姿、気の毒に思えたのでしょう。

店のおばちゃんが、他の客がいないのを見計らい、紙袋をそっと渡してくれました。

部屋へ帰り開けると、食パンの耳でした。

他人様から始めて貰った食べ物、心から有難いと感謝したのは言うまでもありません。

早速、コップに水を入れパンの耳を浸して食べる。

これで一食分助かった。

翌日もパンの耳が貰え、コッペパンを買わずに済んだ分、今度は牛乳を買いました。

牛乳にパンの耳を浸して食べるのです。

更に初めての冬は心身共に堪えました。

常夏育ち、冬用の下着や衣類はなく、敷布や毛布も有りません。

畳の上に、掛け布団一枚で寝る始末。

安アパートの為、隙間風は自由に往来。

明け方はとても寒くて眠れません。

少しでも体温を逃さないよう膝を抱え込み、体の表面積を最小限にし、ガタガタ震えているだけ。

猫の気持ちがよく分かりました。

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