2026年5月4日月曜日

1017 何んだ、これは!

 今考えると栄養状態は極度に悪く、凍死寸前の状態だったのです。

食べ物が欲しい・・。

着るものが欲しい・・。

誰か話し相手が欲しい・・。

頼る人が一人でもいてくれれば・・・

お金はみるみる底をついて行き、孤独、辛さに、このまま生き続けられるのだろうか?

不安のどん底に陥りました。

父が、やっとの思いで作ってくれたお金、周りの反対を黙って押し切ってくれた事、あの拗ね顔を思い出すと、おめおめと島へ戻る訳にもいかず、自分自身が情けなく、

れ果てたある日、一人で天井を見つめ、孤独を噛みしめながら、何気なく手を胸に当ててみました。

「何んだ、これは!」

思わず、声が出ました。

これだけ辛い思いをし、苦しく悲しんでいるはずなのに、鼓動は平常通り、何事もなく、すがすがしい響で脈を打っていたのです。

身も心も一心同体、体全体で苦しんでいるはずが、孤独、寂しさ、辛さは、精神だけの問題にすぎず、鼓動は平常通り淡々と打ち続ける。

ひかるにとっては、生まれて初めての悟りで、自分の精神がいかにひ弱いのか、情けなくなりました。

強い心が欲しい・・

よーし、生きのびて見せる!

自分にとって、後戻りは出来ない。

辛くても前へ進むしかない。

こう心に固く誓いました。

以後、生涯、精神と鼓動の葛藤が続くように成ったのです。

後の鼓動哲学、原点は二十歳の悟りでした。


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